発端(1)

 

写真 発端は2004年の春の頃にまでさかのぼる。おりしも探索の途中であった。

毎回そうであるように、次から次に草ヒロが見つかるわけもなく、また血マナコで探すほどにストイックな人間はおらず、大抵は車内での雑談が時間の大半を占めることになる。

写真 といってヅラヲ以外は車の話題で夜が明けるほどに知識があるわけでもなく、インチンにいたっては街頭のネーちゃんが気になって、ヅラヲが口角泡とともに旧車の話題を熱弁しても上の空である。
後部座席のタチは車に酔うか酔わないかで戦々恐々としており、酔い止めの錠剤を握り締めて小刻みに震えている状態で、使えない。使えないというより、こんな事をしてないで病院に搬送したほうがよさそうだ。

毎度そのような調子なのだが、その時はヅラヲが、レア度の高い廃車の話をしていて、車の知識の無い他二人は、ふんふんと聞いていた。
「昔は珍しい形や面白い形のモノがざらだったからね。そういうのは希少だよ」

ヅラヲが続けて、幾つか希少車の例を出して言う。
そのなかに「フジキャビン」の語が出てくると、インチンが反応した。
「んあ〜、そういえば前、職場の32kmウォークの時、ソレの廃車見たな〜」
こともなげにそう言ったのである。

ヅラヲは一瞬だけ口をポカンと開け、仰天するとともに爆笑しだした。

「フ、フジキャビンが? 草ヒロで?」
ヅラヲは笑いながら、
「それはねぇ、絶対にない!」
写真

だいたいインチンがフジキャビンをキチンと知っているかどうかも怪しく、生産台数が三桁を割るそのようなものが、おいそれと在るわけははないのだ。しかも草ヒロ状態だと言う。

インチンの言う「フジキャビン」、もし、万が一有ったとしたら、どのような状態であっても、即、博物館行きは間違いない。
レア度も判定不能、針が振り切れる。
多少なりとも旧車に興味のある人間ならお判りいただけるだろう。
一言で言うと、「あるわけない」のだ。

ヅラヲは呆れて大爆笑しているのだが、インチンは相変わらず「確かに見たよ〜ん」と平気で言う。
写真


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