叢荘8148号室―インチンコラム「草ヒロ探索紀行」其乃七(1)
其ノ七
「探索隊 TAMに行く」
(1)


2006年1月、正月気分も覚めやらぬ頃、探索隊の面々は名古屋は大須の電気街に集まっていた。

何故旧車探索のメンバーが電気街なのか?
ある種のエナジー充満  それは実はオタクの集団である探索隊のメンバーにとって、ちょっとこじゃれたカフェに集まるのは体質的に受けつけないからである。

さんざんっぱら怪しげな店をひやかし、十二分に或る種のエナジーを吸収してから、探索隊の会合に使われるいつもの喫茶店に落ち着くと、注文を出す暇も有らばこそ、熱く今年の方向性について喧々轟々の議論が交わされた。

 やがて一息いれてリーダーがコーヒーをすすりながら言った。


「そういえばお二方はタムをご存知ですかな?」


 出てきたミックスサンドを頬張り、しかめっ面のタチが呟く。
「はて? それはもしや異国の民族楽器のことですかね?」
 タチがしかめっ面になったのは、ここのサンドイッチは中に入っているコールスローが大変にしょっぱいからである。最も彼氏は恒常的な睡眠不足で名を馳せた方で、この時も多量の塩分に辟易していたのか眠気と戦っていたのか、凡人の伺い知るところではない。


「違います。TAMですよ、知りませんか?」


 タチの受け答えが気に食わなかったのか、やや荒げにコーヒーカップをテーブルに戻すと、メガネをクイッと中指で押し上げるヅラヲ。君は無論知っていようね? と言いたげな目線をインチンに送るが、インチンはインチンで先ほど購入したばかりのゲームボーイミクロでスーパーマリオに夢中の様子で、会話に気付いた様子はない。時折、チッとかシマッタとか呻くのみである。

聞けやお前ら! ひとつため息をつくとヅラヲは説明を始めた。

トヨタ博物館のことですよ。いやしくもこの中部圏で旧車探索をしている以上、当然ご存知と思いましたが・・・」


「いやぁ、全然知らんなぁ〜」


不意にゲーム画面から目をあげて答えたインチンは、ヅラヲの驚愕と怒りを浮かべた表情を見て取ると逃げるように顔を伏せカメとキノコの世界へと逃避する。
 そんなインチンを非難がましく見てタチが言う。


「ぼ、僕は、そういえば名前くらいは・・・知っていた・・・・・・ような・・・無論、行った事はないですが・・・・・・」
なんとも語感が弱い。
 ヅラヲは不満げに鼻を鳴らし、再びコーヒーを一口すすり一呼吸置いた後、強い口調で言った。
「判りました。ここはひとつ私の魂のフルサトTAMに、みなさんを連れていってあげましょう」


「ぜひよろしくお願いします」


あんたは館長きどりか? という思いはぐっと堪えてタチが賛成の意を表じると、ヅラヲは途端にニコニコしだした。本質は好人物なのである。
いろんな店めぐりへ…  やがて、じゃ、そろそろ行くか? とゲームボーイの電源を落としたインチンが促すと、鷹揚にうなづいてレシートにも気付かずに悠々とした足取りで店から出てゆく。本質は天然なのである。

その後、そっち方面担当のインチンに導かれるまま、そっち方面の店に探索隊の面々は姿を消した。そっち方面とは、一体どっちなのか?

無論この場で詳しく言及するわけにはゆかぬ、いきなり筆をおいてしまうわけである。(答:ガンダム等の模型を扱うホビーショップ)



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