叢荘8148号室―インチンコラム「草ヒロ探索紀行」其乃五(2)
其ノ五
「探索隊 1周年を迎える」
(2)


とにかく今回は探索活動1周年を記念して、また前回の探索紀行より大変間のあいたことも記念して、今までの活動の中で特に心に残ったわけでもないことや、わざわざ書き記す必要もないこと、はてはこの駄文に目を通してくださる方たちの身にもなってみろい! という気を起こさせるような比較的どうでもいいことを、徒然なるままに述べてみようと思う。

他人のフリ

それは記憶に新しい2005年1月の総評の中で、リーダーが宣言した「掘り出し物鑑賞会」についてである。
 あれはかなり奥まった所に鎮座していた草ヒロを見つけた時であった。
 適当な路肩に探索車を止め、さて、どうやって目標物まで近づこうかと算段する私をほっぽって、私以外の隊員2名は、わーいと嬌声をあげ、諸手をあげて無造作に田圃や荒野に各々突っ込み、目標物めがけて突進を始めていた。
 いつもなら私も待ってよぉ〜とばかりに駆け出すのだが、この時はなぜかそうはせず、油断なく周囲に目撃者はいないか注意を払いつつ、アノ二人とは関係のないただの通行人を装うために懐からタバコなぞ出し、紫煙をくゆらせていた。
 今思えば、これこそ宿縁だったのだろう。
 車を停めた脇の草むらにガラクタが大量に捨てられたポイントがあったのだが、その中にひとつ、私の注意をひきつけたものがあった。やや遠く離れた草ヒロに群がる二人をそっちのけで、私は恐る恐るその物体に歩んでいった。
 壊れたパチンコ台、ブラウン管に大きく穴が開いたテレビ、風になびく様子が物悲しいカセットテープ、そしてお決まりの廃タイヤの上に、それはちょこんと乗っていた。

これはぁ〜!  そう、探索隊中そっち方面担当の私が発見したのは、まごうことなきエロDVDのパッケージだったのだ!
 荒木飛呂彦ばりに私の脳内効果音が
「ドッギューーーン!!!」
と鳴っていたのは隠し様もない。
 辺りに散乱するガラクタ類に比べてやけに新しく、風雨で劣化した様子もないパッケージ。
「まさか中身は入ってないだろうな・・・」とひとりごちてブツにそっと手を伸ばしながら、さっきとは別の意味合いで慌てて周囲に目撃者がいないか視線を配る。もはやこの辺のくだりは男心の悲しいサガであろう。
 神妙にパッケージを開くと、それは当たり前のように収納されていた。またしても荒木飛呂彦ばりの脳内効果音が響き渡る。
 私は取って返すと草ヒロのまわりで飛んだり跳ねたりしている二人を、いまや辺りをはばからず大声で呼び寄せる

数分後、さっきまで草ヒロの周りで飛んだり跳ねたりしていた人間が一人増えて、今度はDVDの周りで飛び跳ねることとなる。

「さ、早速、車中で鑑賞するヅラ」

名誉の為に人物の特定は避けるが隊員の一人がそう叫ぶ。

「このタイトル・・・『95%AV』・・・気になるタチよ」

これまた個人の名誉の為に特定は避けるが、ZIT探索隊そっち方面担当補佐の隊員が目ざとく違和感に気付いてつぶやく。

ともかくも検証してみようと慌てて3人とも車に飛び乗り、私はすみやかにエンジンを掛け、しなやかにDVDをセットする。かくして日曜の真昼間から車中に妖しい音声を響かせて草ヒロ探索が続行された。
レッツ再生  一応名誉の為に断っておくと、我らがリーダーはこの時、左眼で車外の草ヒロを探し右目でモニターをチェックする超人技を発動したので、上映走行中草ヒロの見落としはなかったと断言しよう。
 私は私で、もしモニターに怪しげな古井戸が映り、あまつさえそこから黒髪の女性がでてきたら隊員の命に関わるので即上映を中止せねばならず、やむなく運転は第六感にまかせ、残る五感の全てを研ぎ澄ましてモニターに集中していたと告白しよう。



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