叢荘8148号室―インチンコラム「草ヒロ探索紀行」其乃四(3)
其ノ四
「探索隊 豁然大悟すること」
(3)


行く先は、最近世界遺産に認定されたことで一躍注目を浴びたW県である。そこまで言っといて今更イニシャル表記は我ながらどうかと思うが、まぁ草ヒロ写真室との兼ね合いもあるのでご容赦願いたい。 探索旅行に出かけます

道中のイザコザ・・・もとい出来事や探索結果については今更語るつもりはないが、ともあれ本格的な旅を企画するにあたって肝心なのは宿泊先であろう。

我々はこの大役をタチ隊員に一任することにした。あからさまな前フリにたいしてきっちりボケて笑いをとるというのは芸人の、いや隊員の宿命であることは無論タチ隊員もわきまえていて、彼が予約を採った宿泊先はなんと高野山の宿坊であった。最初にイニシャル表記にしたことは台無しであるが、そのことはまぁいい。

「ホテルや旅館じゃなくて、寺かよ!」

とお約束のツッコミもリーダーと私は余裕を持ってしたものである。しかし次のタチ隊員の言葉に我々二人は絶句した。

「ちなみに二日目も同じトコね」

ゲロッパ誘発山道

二日目は変えろよ! わし等を出家させるつもりか!? 天丼ってやつか? いくつかのツッコミの言葉を飲み込んだのは宿までの道中にさしかかったときである。行ったことがある方ならおわかりだと思うが、高野山というところ、御山だけあってどの道を選んでもそれはクネクネと蛇行した山道なのである。そして我らがタチ隊員は我が探索隊におけるゲロッパ(前回参照)担当隊員なのである。自らを犠牲にした壮大な笑い! 山道に差し掛かり顔面蒼白となったタチ隊員を見て、私とリーダーの目にはうっすら涙が浮かびました。もちろん笑いすぎで。この時の体を張った氏の働きから、当分宿の手配はタチ隊員が専任することとなり、次の旅でも思い出深い出来事があったのだが、それはまた別の機会に語ろう。

約一名フラフラになって宿というかに着くと、当たり前だが出迎えてくれたのは中庭を掃除していた大勢の小坊主サンたち。夕日を頭で反射して一斉にこちらを向かれた時は流石に我々も緊張しました。ひとり年かさの小坊主サンが部屋まで案内してくれましたが、なにやら強面の寺男サンの視線が我々に注がれ隊員達の緊張は否がおうにも盛り上がります。
本日は当山にお泊り有難うございます
「あぁ・・・ハイ」
夕食は7時にお部屋に持ってまいります
「あぁ・・・ハイ」
宿坊にて朝のお勤めはご参加なされますか?
「あぁ・・・ハイ」

一礼をして出てゆく坊主頭を見送り、とんでもないことを承諾してしまったことに恐れおののく隊員一同。

朝のお勤め? 一体何時に起きるのだ? 何故折角の休みに早起きせねばならんのだ! 興奮も醒めやらで何やら廊下から声が聞こえてくる。
 耳をすますと「ヘイ、マイケル〜」などという異国の方の声が聞こえてくる。自分らを取り囲む状況とそのネイティブな英語は見事に不協和音を奏で、一瞬「ここどこ?」といった感想を抱かせるに充分だった。
 おそらく異国の方々にとっては日本の古い寺というのはすこぶる異国情緒を誘う場所なのであろう。それはなんとなくわかる。

しかし、翌朝眠たい目をこすり叩き起こされた隊員一同は、朝のお勤めのため本堂に案内され再び驚愕した。なんとお勤めに参加しているのは、我々と坊さん以外、みんな異国の方々なのだ! 体育座りなんかしちゃってますよ、マイケルは!
 そして荘厳に和尚様と小坊主達がお経をあげ始める。 我々もいつまでも事態に驚いてばかりはいられない。隊員達はそれぞれ草ヒロの神に、いやに、本日はたくさん草ヒロがみつかりますように、と祈りだすことにした。
獲得を祈祷しつつ探索へ  まさか一生懸命にお経を捧げてる和尚様も坊さん達も、数少ない日本人である我々がそんなことを祈っていたなんて、そうお釈迦様でも気がつくめぇ。

他にもこの探索行には様々な出来事が我々探索隊を待ち受けていたが、そろそろ既定の文字数をオーバーしてきたので、その話は機会があればだが、またにしようと思う。

そうそう、我々が二日もお世話になった宿坊はその名も「恵光院」という由緒正しきお寺だったが、朝のお勤めでの祈りが通じたのか、その日の探索でエコーが見つかったときは仏の慈悲深さに隊員一同ハラハラと落涙しました。

なんだ、最後はダジャレかよ、というツッコミを背にこの駄文を終えようと思います。
 ナ〜ム〜。

(2004.8.29)




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-CONTENTS-
◆序 
◆其ノ壱  「探索隊 おおいに誤解されること」
◆其ノ弐  「探索隊 ジンクスに悩むこと」
◆其ノ参  「探索隊 サクラチル」
◆其ノ四  「探索隊 豁然大悟すること」
◆其ノ五  「探索隊 1周年を迎える」
◆其ノ六  「探索隊 高速道路 ひそむワナ」
◆其ノ七  「探索隊 TAMへ行く」


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